コーヒーの味わいの表現としてコクとキレという言葉をよく耳にしたことがあると思います。
しかし、ぶっちゃけニュアンスでしか分からないことが多く、実際説明してみろと言われたらできないと思います。
私自身、商売としてコーヒーを扱うまで、ちゃんと考えたことはありませんでした。
肌感覚ではなんとなくわかるけどしっかりとはわからないコクとキレのついて説明していきます。
前半部分ではコクについて、後半部分ではキレについて解説してきたいと思います。
目次でお好きなところから読んでいていただければと思います。
コクとは?
コクの定義ははっきり言うと決まっていません。
コクというのはかなりあいまいな言葉で、うま味とは区別されて使われますが、うま味と同じくおいしさを決める大事な要因の一つです。
科学的な見解もいまだにわかっていないことが多い「コク」ですが、コクには時間的広がりと空間的広がりがあると表現されることがあります。
そちらの面から見たコクを解説していこうと思います!
空間的広がりとは何か?
いったん料理で説明すると、おいしい料理は舌の隅々まで甘味、塩味、うま味等、すべての感覚をくすぐります。
単に味覚だけでなく食材の歯触りや、舌で感じる柔らかさ、上顎での感触や濃厚さを醸し出す粘りなど物理的な感触も空間を拡大してくれます。
これらすべてが調和の取れた広がりを感じるときにひとはコクがあると感じます。
時間的広がりとはなにか
味の広がりは一瞬ではありません。
同じ甘味だとしても、口に入れた後すぐに感じる甘味、それに続く中間的な甘味、さらに後に来る後半の甘味と余韻のように甘味によっても特徴があります。
この味わいの時間差があることがコクを感じるのにつながっているといわれています。
コクまとめ
コクとは調和のとれた空間的な広がりと時間的広がりをあわせもった味わいの複雑性のことを指します。
簡単に表現すると味の多さみたいなかんじになります。
ではコーヒーにおいてのコクとは何でしょうか?
コーヒーにおけるコクとは?
コーヒーは液体ですので歯ごたえはありませんので食感はありません。
しかし、コーヒーには口に含んだ瞬間に感じる濃度や、舌触り、粘度といった要素があります。
これをマウスフィールと呼びます。
このマウスフィールがコクの要素である、味わい空間的広がりの面で重要な役割を持っているのだと思われます。
これは焙煎や抽出の過程によって得られる味覚成分の量、油分、濃度などの様々なものが関係します。
淹れ方によっても変化します。例えばペーパードリップか金属フィルターでのドリップかでも透過する油分の量が変わります。
ペーパーだとあっさり落ちて金属フィルターだと油分が透過することで液体の質感が変わり、コクを感じやすくなるでしょう。
このように同じ豆でも淹れ方ひとつでコクは変わったりします。
味覚的な面では、コーヒーの味を構成するものとして、酸味、苦み、二つがあります。
この苦みと酸味についてですが、苦みはコクと大きくかかわる要素であり、酸味はキレと大きくかかわる要素です。
コーヒーを口に含んだ瞬間に感じる苦み、それに続くように感じる苦み、余韻に残る苦みなど、一口に苦みを言ってもコーヒーには様々な種類の苦みの成分が含まれています。
これによって感じる時間的広がりが大きい苦みがコクのある苦みだと思います。
また、この苦みにプラスしてコーヒーには甘い香りのする成分が含まれています。
それによって感じる甘さの時間的広がりが苦みと重なることで、より味わいの複雑さが増えてコーヒーのコクを生み出します。
甘さは香りから由来していて、錯覚で感じているというのが現在の定説です。
甘さについては以下の記事でも解説してるので是非読んでみてください。
コーヒーの甘さとは?
つまり、苦みの量と甘さの香りの量が多い豆がよいということになります。
その条件を満たしやすいのは、深煎りの豆です。
コクがあるコーヒーを飲みたい方は深煎りの豆を選ぶことがおススメです。
コーヒーのコクとは?まとめ
コーヒーのコクを感じる要素は二つある。
- マウスフィールと呼ばれるコーヒーには口に含んだ瞬間に感じる濃度や、舌触り、粘度といった要素。
- 苦みと甘さの複雑性と時間的広がり。
コクのあるコーヒーの淹れ方
コクのあるコーヒーの淹れ方としては、ネルドリップや金属フィルターを使うもの、フレンチプレスのほうが適切ではありますが一番一般的なペーパードリップでのコクのあるコーヒーの淹れ方を紹介します。
ポイントとしては5つあります。
- 深煎りの豆を使う
- お湯の温度を上げ
- 抽出時間を長くする
- 粉を少し細かく挽く
- お湯を入れる回数を細かく分ける
おすすめ抽出レシピ
- 粉(中細挽き)15g
- お湯80~88℃(おすすめは86℃) 230㎖
- 蒸らし30㎖ 30秒
- 注ぎ方 珈琲豆のドームを崩さないように深呼吸させながら育てていくように、中心に細くゆっくり注ぐ
- 2分注ぎ切り2分30秒落ち切りを目安に
レシピの狙い
粉:深煎りは細かく挽きすぎると苦みが出過ぎるので少し荒めに挽く。そうすることで嫌な苦みや雑味を抑えることができる。
お湯:温度が高すぎるととがった苦みが出てしまうので80℃台でいれる。おすすめは86℃くらいで淹れて、味を見て調整する。
蒸らし:基本の30秒がおススメ。深煎りのコーヒーはガスを多く含んでいるので、30秒くらいで珈琲のドームがピークを迎えるとおもいます。
注ぎ方:ゆっくり細かく分けて細く注ぐことで、コーヒーの成分をより多く引き出す。中心にのみ注ぐことで雑味を抑えてまろやかな味わいにする。
抽出時間:2分半落ち切りを目安にする。早すぎても物足りない味になり、3分越えると少し雑味が出る場合が多くなる(豆によるが)
レシピの調整
苦い場合
- 温度を下げる
- 抽出時間を短くする
- 挽目を粗くする
コクがない
- 挽目を少し細かくする
- 抽出時間を延ばす
- 温度を少し上げる
- 注ぐ回数を細かく分ける
甘さを出したい場合
- 抽出の前半の湯量を減らし、後半を多くする(総量は同じ)
- 挽目を少し細かくする
キレとは?
味のキレという言葉は文字通り、味が切れるというところからきてると言われています。
このキレとは後味の余韻が切れることを指すのですが、味覚を感じる濃さと時間の長さによって決まります。
味の濃度が強く、感じる時間が短いとキレご良いという表現になります。
つまり味の濃度差が短時間で大きくなればなるほどキレがよいということになります。
コーヒーにおけるキレとは?
キレの良いコーヒーとは苦みや酸味などの味の濃度が強く、それが後に引かないでスッと消えるコーヒーになります。
コクに関しては味覚の空間的広がりが重要な要因になりましたが、キレに関してはあまり関係がなく、味の強弱と時間的感じ方が大切になっていきます。
コーヒーの抽出の際、味の成分の出方として順番があり、
酸味⇒甘味⇒質感⇒苦み⇒雑味
のような順番に抽出されていきます。
これは成分によってお湯に溶け出す時間が違うということです。つまり抽出時間が長くなってしまうと味覚の時間的広がりが大きくなってしまいキレのあるコーヒーではなくなってしまいます。
つまりキレのあるコーヒーにしたい場合、濃度を濃くしながら抽出時間を短めにするアプローチが必要になっていきます。
使う豆としては味の量が多く、酸味も苦みを両方とも感じられる中煎り、中深煎りくらいの豆が適切だと思います。
キレのあるコーヒーの淹れ方
キレのあるコーヒーを入れたい場合は抽出器具としてはペーパードリップがおススメです。
最も日本人にはなじみ深いと思いますのでそちらのやり方を解説していきます。
ポイントとしては
- 中煎りor中深煎りの豆を使う
- 抽出時間を二分半以内にする
- 豆を少し荒く挽く
- 豆の量を多めに使う
- 抽湯回数をあまり細かく分けない
おすすめ抽出レシピ
- 粉(中粗挽き)16g
- お湯90℃前後 230㎖
- 蒸らし30㎖ 30秒
- 注ぎ方 粉のドームの中心に50㎖を四回に分けて注湯
- 2分注ぎ切り2分30秒以内落ち切りを目安に
レシピの狙い
粉は少し荒めに挽いて雑味や舌のざらつきとして残る成分が出づらくする。
粗く挽いた分少し豆の量を多くして濃度を調節する。
お湯の温度はあまり高過ぎず低すぎずに設定する。高すぎるときつい苦みや雑味がでてしまい、低すぎるとキレのあるコーヒーというよりすっきりした味わいになってしまう。
蒸らしは平均的な30秒である程度しっかり味を引き出す。
注ぎ方はどの時間でも均等に味の成分を引き出すようにする。雑味などが気になる場合は最後の注湯を減らして一投目に持ってくる。
時間はあまり長くせず、早めに抽出を終えることで味の時間的広がりを抑え、キレのある味わいにする。
レシピの調整
スッキリしてしまう
粉の量を増やす
温度を上げてみる
濃くなりすぎる
豆の挽目を粗くする
温度を下げる
まとめ
コーヒーのコクとは?
マウスフィールと呼ばれるコーヒーには口に含んだ瞬間に感じる濃度や、舌触り、粘度といった要素が多いこと。
苦みと甘さの複雑性と時間的広がりが大きいこと。
コーヒーのキレとは?
酸味や苦みの濃度が強く、それが後に引かず、後味がスッと消える味わい
以上がコーヒーのコクとキレについてでした。
あまり言語化されず、感覚で捉えることの多い言葉ですが、この記事によって考えるきっかけになったら嬉しいです。
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